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相続直前に銀行から出金され消えた現金への相続税課税について

掲載日:平成24年10月分

『相続直前に銀行から出金され消えた現金への相続税課税』について、実際の国税不服審判所裁決事例をご紹介したいと思います。(平成23年6月21日裁決)


◎事案の概要
平成19年4月21日(相続開始日)に死亡した被相続人名義の貯蓄預金から、4月19日に現金で引き出された5000万円について、被相続人の相続財産であるとして相続税の更正処分を行ったのに対し、相続人らが相続開始日においてその現金は存在しておらず相続財産ではないとして、更正処分の取り消しを求めた事案である。
◎税務署の主張
5000万円の金額は、それを引き出す直前における被相続人の預金残高の8割を超える額であり、被相続人が相続人Aにこれほど多額の現金を自宅から離れた病院に持ち込ませる必要はないし、被相続人がこの現金を管理し、退院するまでのわずかな時間にその全額を費消したとは通常考え難く、かえってこの現金を引き出した相続人Aが管理していたと考えることが自然であり、にわかに信用することはできない。
さらに、被相続人はこの現金の引出日から相続開始日までの間、いったん退院した後、翌日から別の病院に入院していること、またこの現金が被相続人の管理下になったと相続人らの主張する日から相続開始日までの日数が極めて短期間であることを併せれば、被相続人がこの現金を費消したとする客観的な証拠が見当たらない以上、この現金は相続開始日において存在していたと認めるのが相当であり、相続財産であると認められる。
◎子の主張
相続人Aは被相続人の指示に基づき、銀行から現金を引出、その当日に被相続人の入院先である病院にこの現金を運び、全額を被相続人に引き渡した。
相続人らは、その後におけるこの現金の保管及び処分には全く関与していないし、被相続人からこの現金の使途についても知らされていない。したがってこの現金は、被相続人が費消したものであり、相続開始日においては存在しなかったというべきであるから、相続財産にはならない。
◎国税不服審判所の判断
入院した病院は個室だが個室内のロッカー等は患者により施錠できるものではない。過去7年間で1度に100万円を超える出金は、使途が明らかなもの以外にはない。
入院していた病院に寄付された事実もない。4月11日から相続開始日までの入院費の支払いも相続人Bが自分の手持資金から支払った。病院からの文書には保険適用外の治療だと治療費1,000万円~5,000万円と記されているが、実際にはその治療はなかった。
税務職員の調査によれば、高額資産購入や他人への貸付、借入金の返済等はない。そしてギャンブル等の浪費によってすべて費消するには期間が短すぎる。よって、この現金は相続開始時点までに被相続人の支配が及ぶ範囲の財産から流出しておらず、相続財産であると認められる。
◎ワンポイントアドバイス
上記のように「現金はどこかにあるのだろうから課税は適当だ。」という見方をされる可能性がありますので、多額の現金を引き出した時は用途や残高を書いておきましょう。

この情報は2012年10月時点の情報を元に執筆されています。最新の情報とは異なる場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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